さよならみどりちゃん
前略、元気ですか?
こうして、君に手紙を書くのも久し振りのことだね。ここ数ヶ月の間、実は仕事がもの凄くスリリングな状況で、なんだか、映画の事をどうこう言っている場合じゃない、という感じだったんだ。
昔、僕が車の免許を取ったばかりの頃、車で1時間くらいの僕の家と君の家の間を、僕の運転で行き来するだけで、もの凄くスリル満点だったじゃない?2人とも、なんだかそのスリルだけで満足してしまって、他にどこかへ行ったりする必要なんかなくなってしまっていたよね。今回の僕の仕事もそんな感じで、日々のスリルと充実感が大きすぎて、ほかの事に気が廻らない、という感じでした。
でも、そんな中でも、映画を見てはいたんだ。今日はそんな中で見た映画、『さよならみどりちゃん』です。
この映画は、久し振りにちょっと時間が出来て、映画館に別の映画を目当てに行ったら、ちょうど公開していて、元々、見ようと思っていた映画よりも、なんだか魅かれてしまって思わず見てしまった、という映画です。
この映画は、数年前にドイツかどこかの映画祭で、なんと、主演女優賞をとったらしくて、僕が見た時が封切り公開というわけじゃなくて、賞をとったので、改めて公開されていたのかなあ。全く宣伝されてなくて、内容も全然しらなかったんだけど、『さよならみどりちゃん』というタイトルに妙に魅力を感じたというわけです。
で、そうして見たこの映画、なかなかおもしろかったよ。短い映画なんだけど、盛り上がりもあるし、見終わった後に、映画を見た満足感のようなものを感じました。主演女優賞だけあって、主演の星野真里も良かったです。
どんな映画なのかと言うと・・・
星野真里が演じているユーコという女の子は、ユタカという男とつきあっているんだけど、ユタカは、自分には「本命の彼女」がいると言うんだ。それが「みどりちゃん」というわけ。
ユーコは、そんなユタカと別れるわけでもなく、なんとなく関係を続けている。ユタカの言いなりになって、カラオケスナックでバイトすることになったり、ユタカを狙っているという、元気な女子大生が現れたり、ユタカの後輩にせまられたり・・・。
ユーコは、みどりちゃんの影を感じさせる、そして、他の女の子とも好き勝手をしているユタカ、満足して、そのまま受け入れている、というわけではないんだけど、かと言って、自分の気持ちを口にするわけでもない。
自分が本当のところ、どんなことを望んでいるのか、自分の中でもコトバになっていない、という感じかな。ユタカの方は、ユタカの方で、好き勝手をしながらも、ユーコがどこまで許容してくれるのか、試しているようなところがあるのかな。そんな2人の関係は、ユーコが自分の気持ちを言葉にして、ことさら言い立てたりしないこと、そして、ユタカがなんだかんだ言っても、ユーコの許容範囲を逸脱しないこと、この2つの事柄によって、妙な緊張感を孕みながら、微妙にバランスが保たる。
そして、この変な均衡状態が崩れる、何かこの状態を打ち破るようなことが、起こるのか、起こらないのか?!
というのが、この映画に見所かなあ、と思いました。
ユーコは、自分の置かれた状況を全て肯定しているわけではないけれども、ユタカとのつきあいで与えられる、他人とのかかわりで得られる生々しさ、実感の様なものを失いたくもないのかな、と思いました。
この辺の、ユーコとユタカ、そしてその周りの人たちの人間関係、というか、彼らの心理というか、そのあたりがこの映画の見所かな。
君は、
こんな関係は、嫌い!
と言うかも知れないな。
冷静に見ると、ユタカのダメ男ぶりは、かなりのものだし、ユーコは、所謂、都合の良い女という感じだし。
この2人の関係をどう思うかで、映画のラストに訪れるカタルシスをどう感じるか、結局、この映画をどう思うのかが別れてくるのかも知れないな、と思います。
さて、今日のところは、この辺で終わります。
また、手紙を書きます。
今度、一緒に映画を見に行こう。