LM * The Letters about a MOVIE.

映画に関する君への手紙。

歓びを歌にのせて Sa som i himmelen

歓びを歌にのせて [DVD] 映画パンフレット 「歓びを歌にのせて」 監督/脚本 ケイ・ポラック 出演 ミカエル・ニュクビスト/フリーダ・ハルグレン/ヘレン・ヒョホルム/レナート・ヤーケル/ニコラス・ファルク/インゲラ・オールソン/ペア・モアベア

前略、元気ですか?

昨日は、友達の結婚を祝いに東京へ行き、今日、帰って来ました。

君は、ゴールデンウィークと言っても、結構、忙しいと言っていたね。僕は今日は時間があったので、せっかくの東京だし、映画をひとつ見て帰ろうと思ったんだよね。それで、昨日の夜、いろいろ今公開されている映画を物色していたら、東京に住んでいた時によく行っていた、小さな映画館で、『喜びを歌にのせて』をやっていました。

この映画は、去年の年末の頃に公開されていたけれど、その時は、去年は音楽映画は『コーラス』があったので、まあいいや、という感じで、見逃していました。

「せっかくの東京だから」なんて言っているんだったら、最新の映画や、東京でしか公開していないのを見れば良いのに、という気もするけど、音楽映画はとても好きだし、それを、久し振りに訪れたお気に入りの場所で見る、という魅力に抗えず、結局、これを見て来ました。

http://www.elephant-picture.jp/yorokobi/

 

 

雪深い、スウェーデンの北部の村に、ある指揮者がやって来ます。彼は、若くして、音楽家としてデビューし、指揮者として成功しているけれども、身体を壊し、幼い時代を過ごしたこの村に帰って来たんだ。そして、村の教会の聖歌隊の指導をすることになる、というストーリ。

彼は指揮者なので、声楽やコーラスの専門家でもないので、コーラスに指導は、手探り状態で始まる。それに、有名な指揮者として多忙な日々を送ってきた彼には、村の人とのコミュニケーションだとか、「生活」そのものが、手探りという感じ。

そうして、彼の指導が始まるけれども、聖歌隊に集まってくる村人達も、一人一人、何かしらの問題をかかえているんだよね。そんな村人達に、彼は、「音楽はそこにある。それを掴み取るんだ。」という指導をするんだ。それは、人生の歓びや悲しみ、そういった、そこにあるもの、それが生きることなんだ、と言っているようだと思いました。

聖歌隊のメンバーが抱えている問題が順番に明らかになっていくあたり、僕は、この映画は、スウェーデンの田舎版、コーラスラインなのか?いや、そうでもないか、なんて思いながら見ていたんだけど、突然、2時間強の上映時間のまだ中間あたりで、いきなり、凄いシーンがやって来ました。

それは、聖歌隊のメンバーの中の、ガブリエラという女性が歌うところ。なんていう力強さ。なんていう音楽の力。人間は、再生することができる、やり直せない人生なんて無い、ということを実感してしまいました。

そんな感じで、最後まで見て、この映画は凄く良かった!というのが、僕の感想です。

どこがそんなに良いかと言うと、まず、さっき書いた歌、音楽が良いのはもちろんなんだけど、音楽を通して、人生のことを描いているところ。そして、決して、音楽が全てを解決するわけじゃない、というところかな。

最後の終わり方も、「あー、こういう風に終わらせるか。」という感じもするわけだけど、「人々の心を開く音楽を作り出す」ことが夢だと言っていた彼が、この村の聖歌隊によってそれを実現させたかに見えたけれども、ああいう事になってしまう。それは理不尽であるかも知れないけど、僕たちが生きるってことは、こういうことなんだ、と言われた様に思いました。

この映画は、音楽を通して、「人生」を描いたものなんだと思うと、なんとなく納得、と思います。それも含めて、僕たちの歓びであり、悲しみである、と。

まあ、とにかく、この映画はお薦めです。もっと早く見ておけば良かったよ。

では、また手紙を書きます。

今度一緒に映画を見に行こう。