LM * The Letters about a MOVIE.

映画に関する君への手紙。

コーラス Les Choristes

昨日、今日と、こちらはとても良い天気です。
こんな日に、君と一緒に、どこかへ出かけたりできたら、
どんなに楽しいだろう、と思ったりしますが、そちらはどうですか?
君はどうしていますか?

昨日は、『コーラス』という映画を見たんだ。
映画は良かったし、数年ぶりに友人に再会したりしてとても良い日でした。

昨日、あの瞬間、長年会ってもいなかった人間同士が、
あの場所に立つ確率って、いったいどれくらいなんだろう。

そんな昨日に続いて、今日は、
仕事を早く切り上げて、もう一度『コーラス』を見ました。
それくらい良い映画だったんだ。
そして、映画の後、レコード店へ行ったら、
ここ何ヶ月も探していて、どこにも売っていなかったCDを見つけました。
これも、小さな確率の上に起こった出来事の一つでしょうか。

こういう事があると、僕達の身にも何か、
特別な事が起こるということを、信じて良い、
という気持ちになってきます。

だから、今僕は、君とのことについて、思いを馳せています。
僕達だって、ものすごく小さな確率の上に出会ったんだから。

君は今、どうしていますか?

 

さて、『コーラス』なんだけど、
この映画を見ている間、僕は、
とても濃密な時間を味わったと感じました。

僕に残っている、
子供の頃、初めて映画を見た記憶は、
友達の家で、テレビで日本の怪獣映画を見たというもの。
この時、僕は周りが目に入らない程、夢中になりました。
会話もままらない僕に、しまいには、友達が怒り出してしまい、
おかげで僕もこの経験を記憶しているというわけです。

この『コーラス』に感じた、
濃密さというのは、この時に感覚に似ています。

それほど、引き込まれて見たというわけです。
でも、この濃密さはどこから生まれているんだろう?

ストーリーに何か、
目新しいものがあるわけではありません。

”池の底”という寄宿学校があります。
そこは、手に負えない問題児が集められ、
再教育を施される施設です。
非常に高圧的な校長先生が居て、
生徒達が何かやるとすぐに体罰を行ったり、
うすぐらい反省室に閉じ込めたり、といった事をしています。

そこに、舎監として新しい先生がやって来て、
彼は、生徒達のコーラス隊を作ることになります。
コーラスを通して、生徒達も、彼らの学校生活も、変わり始める...。

別に、映像にどこか、
奇をてらったものがあったりするというのでもありません。

新任の舎監として、マチュー先生が、
やって来たころの”池の底”は、どこか、
ハリー・ポッターを思わせる様な、暗く重い感じですが、
少年達がコーラスを始めた頃からは、陽の光がいっぱいさしこみ、
明るい場所に変わります。

音楽。
タイトルにもなっている、少年達のコーラスは、
もちろん素晴らしいんだけれども、この映画の濃密さは、
彼らがコーラスで歌い始める前から、始まっています。
少なくとも彼らの歌だけが、
この映画の良さというわけではないと思うのです。

つまるところ、丁寧に作られている、ということなんだろうか。
なんて言うか、安易に見所を作らず、全体の完成度で勝負、
というか・・・

この映画を前にすると、他のいろいろな映画が、
軽薄に見えて来てしまうような気がしました。

ところで、こういう映画の技術的なことは、ともかく、
舎監として”池の底”にやってきた、マチュー先生なんだけど、
とても、まっとうな感覚を持った人だと僕は思いました。

例えば、学校でもろもろの雑用をしている人物に、
いたずらから怪我をさせてしまった生徒に対して、
体罰の代わりに、彼の看病をすることを、指示したり、

いたずらの犯人を探し出そうとする校長のやり方に対して、
「密告させるんですか」という反対意見を持ったり。

まっとうな感覚で、かつ誠実なんです。

僕は、こういう人にある種、
憧れを感じてしまうところがあります。

僕なんかどちらかと言うと、
いろんな事を頭で考えてなんとかしたいタイプで、
自分の周りで起こることに対して、ともすればいろいろな計算が、
頭をよぎることがあります。

でも、本当はこの世界で、
起こる全てのことを、計算して予測することなんか出来ない。
世界を前に、僕達はある意味無力な存在なんだ。

そんな世界に対して、こういう、まっとうさ、
誠実さだけが、力を与えてくれるような気がします。

さて、この映画、その素敵さを、
言い尽くすことなんて、出来そうにありません。

だから君にも是非、見て欲しいです。
そして感想を教えてください。

僕は、この映画を見ていろいろなことを感じ、思いました。
君は、どんなことを感じ、何を思うんだろうか。

それでは、また、手紙を書きます。
今度、一緒に映画を見に行こう。

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