LM * The Letters about a MOVIE.

映画に関する君への手紙。

サヨナラCOLOR

サヨナラCOLOR スペシャル・エディション [DVD] サヨナラCOLOR/明日へゆけ

前略、元気ですか?
今日は、『サヨナラCOLOR』を見てきました。

以前、『姑獲鳥の夏』のことを書いた時に、ちょっと触れていたヤツ。
→ http://miyadaic.hatenablog.com/entry/2005/07/17/212000

原田知世が出ています。君にとっては、原田知世が出ていようが、関係ないわ、ってなもんだろうけど、僕にとっては見逃せない映画なんだな。別に演技がどうとか、そんなことに関係なくというか、そういうことを超越して、好きなんだもん。1人くらいそういう女優さんがいたっていいでしょ?

というわけで、原田知世、堪能しました。台詞もいっぱいあるし、何より、可憐でした。満足したよ。でも、映画の内容は、それ以上に満足できるものでした。

頭の片隅では、原田知世の可憐さにほくそ笑みながら、別の片隅では全然別の事を考えていました。

鎌倉か湘南か、まあどこか海辺の街の病院で医師をしている、佐々木正平(竹中直人)。彼は、独身ではあるが、飲み屋のおねえちゃんと付き合っており、また、電車で知り合った女子高生と、援交(?)したりもしてしまう。

佐々木の病院に入院している、笈川未知子(原田知世)は佐々木の高校時代の同級生なのだが、高校時代の他のことは思い出せるのに、担当医となった佐々木のことだけはどうしても思い出せない。毎日、彼女の病室を訪れては、僕のこと思い出してくれましたか?と聞く佐々木...

未知子は、子宮癌で、かなり病状が進行しており、手術を施すことが出来るかどうかも微妙な状況。自分を全く覚えていない未知子の様子に、複雑な佐々木だが、自分が未知子を救う、という強い決意とともに、治療を行い、病状は好転したかに見えた。が、実は、その佐々木自身も...

とまあ、だいたいこんなストーリーです。

2人の、というか、主に佐々木の、高校時代の思い出の甘さと、子宮癌という現実の重さ、そのコントラストと、現在の2人の抱える人間関係といった要素も相まって、激しさはないものの、胸にせまる映画になっている、と思う。

そして、僕が一方で、原田知世の可憐さに魅了されながら、彼らの高校時代のエピソードに笑いながら、考えていたのは、こんなことなんだ。

どうしたって、時は流れる。映画の中でも、もちろん、僕達の現実の中でも。
君と知り合った時、僕はまだ21だったよね。君に至ってはまだ十台だったじゃない?原田知世なんかより、援交女子高生の方に近い年齢だったわけだ。あの頃、僕は、君とあらゆる事を楽しみたい、と言ったことがあったよね。

そして、今、あれから10年以上の時が流れている。あの頃、僕達の前には未来ばかりが広がっていたけれども、気が付くと、もう、死、というものが確実に、近づいてきているのかも知れない。

この映画の中でも、飲み屋のねえちゃんに、腰を揉んでもらったりとか、援交しない?と言われてドギマギしていたり、”同居人”の男が浮気者で、自分の友達と出来てしまっていたりする。

人間なんて、どうせそんな、しょうもないものなんだ、と言ってしまえば、その通り。それは、誰かの死、というものを前にしても、そんな急に変われるようなもんじゃないのかも知れない。

でも、そんな、しょうもない存在でありながら、一方でそれを棚に上げて、誰かを一途に思ったり、誰かを信じようとしたりせずにはいられないんだな。まあ、簡単に棚に上がってしまうところが、また、しょうもないんだけど。

あー、なんか、結局人間、しょうもないところも、そうじゃないところも併せ持ったものなんだ、なんて、月並みな話になって来てしまったよ。

僕達のこの10何年か、楽しいことも、苦しいことも、頭に来ることもあったけど、それは僕達のしょうもなさの成せる技なんだよ、多分。

そして、これは、きっとこれからも続いていく。僕達はしょうもない、きっとしょうもない未来が待ち受けてるよ。僕は、それをやっぱり君と共有したい、と思っている。

君は、そんなしょうもない未来なんてゴメンだわ、って思うだろうか。だけど、僕達は、お世辞にも立派な大人だ、なんて言えるもんじゃないよね?僕は、僕達のしょうもなさを、ちょっと祝福したい、そんな気分なんだ。この映画がそんな気分にしてくれた、というワケです。

ところで、この映画、どっかでも見たことある顔が、たくさん出てきます。内村光良中島みゆき久世光彦忌野清志郎片桐はいり大森はじめ高野寛、スチャダラ・パー、などなど。それに、竹中直人らしい笑いもたくさんあるよ。援助交際の女子高生は、『スウィング・ガールズ』でベースを弾いて凄んでいた女優さんでした。

それに音楽なんだけど、映画のタイトルになっている『サヨナラCOLOR』も、それ以外も、音楽好きにはかなり堪らないラインナップらしい(と友達が言っていた)。僕は、分かるのと分からないのとあるかな、という程度だったけど、全体にアコースティックな感じで、とても良かった。

そんな、いろいろな要素が、しょうもない人間達の、しょうもないけど、心に残る恋、をうまく描いている、という気がします。まあ、ストーリーが、後半、というかラスト、ちょっと陳腐かな、という気がしたけど、物語は終わらせなくちゃいけないし、仕方ないか、という感じ。

どうせ、原田知世の笑顔を見てニヤけてたんでしょ?
それで、そんなに肯定的なんじゃないの?

ま、それもある。
でも、良かったと思うよ。

というわけで、また手紙を書きます。
今度、一緒に映画を見に行こう。