LM * The Letters about a MOVIE.

映画に関する君への手紙。

サマー・タイムマシン・ブルース

サマータイムマシン・ブルース スタンダード・エディション (初回生産限定価格) [DVD]

■公式サイト
http://stmb.playxmovie.com/

前略、元気ですか?

僕が高校時代に、とても面白く読んだものの一つに、広瀬正という人の『マイナス・ゼロ』という本があります。これが、もの凄く面白い本なんだ。タイムマシンが出てくるSFで、論理的に破綻したところが無く、物語としても、とても切なく、とても面白く、スゴイ作家を見つけた!と感動したんだ。

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

それで、高校生の僕は、この人の本を読みあさり、さらに、週1回だけあったホーム・ルームの司会が僕に廻ってきた時に、タイムマシンや、タイム・パラドックスについて語る会を催してしまいました。

それ以来、僕にとって、タイム・パラドックスものの最高峰は、この『マイナス・ゼロ』なんだけれども、この『サマー・タイムマシン・ブルース』、エンターテイメントとして、これに迫る程だった!という気がしています。

ちなみに、タイム・パラドックス、というのは、タイムマシンが存在すると仮定した時に起こってくる、様々な矛盾の事です。

例えば、タイムマシンで過去に行って、自分の親を殺してしまったら、自分は、生まれて来ないことになる。その時、ここにこうして存在している自分はどうなるの?とか、

タイムマシンで未来に行って、未来の自分が作ったものを、過去に持って帰ってしまう。そして、本来、自分がそれを作った時が来ても、作ることをしなかったとしたら、誰も作っていない物が、自分の手にある、ということになる、とか。

タイムマシンというものを使うと、これから起こることを、予め知っている人物が、登場することになるんだよね。それによって、どんな風に観客を楽しませるか、そこにタイム・パラドックスが、どう、絡んでくるのか、それともパラドックスには触れないで置くのか、その辺が、タイムマシンものを作る時の、腕の見せ所なのかな、と思う。

で、この、『サマー・タイムマシン・ブルース』は、とても巧いよ。

大学のSF研と、カメラクラブの部員、という限られた登場人物、そして、その部室、という限られた場所。そこにタイムマシンを持ち込んで、登場人物達にダイナミックと言える程の行き来をさせる。この辺もうまいし、種明かしの納得間は、タイムマシンもののSFとしても十分。そして、一番うまいところは、種明かしに笑いを持ち込んだところ。見ている僕達は、納得しながら、笑っている。笑いながら、納得している。

この、だんだん、種が分かってくるあたりからの展開が最高だな、と思いました。うーん、正に、エンターテイメントだよ。

ところで、この映画には、2人の女の子が登場するんだけど、一人は、去年の『スウィング・ガールズ』に主演していた、上野樹里という女優さんです。彼女の役どころはとても面白い。他の男の子達のタイムマシン騒ぎとは、ちょっと離れたところにいるんだけれども、それでいて、この映画に欠かすことの出来ない役回りになっています。この役だけは、なんというかとてもナチュラルな感じ。

そして、この役のナチュラルさが、主人公の男の子が最後抱く思い、つまりは、この映画の結論?といったものを、引き出すんだな。

それは、熱くなり過ぎず、クールになりす過ぎず、なかなか素敵なことだったと思います。

そんなわけで、この映画、エンターテイメントとして、素晴らしく面白く、SFとしてもなかなか。そして、青春ものとしてもGOODというものだった。お薦めだよ。

そう言えば、この映画に出てきた、クーラーのリモコンだけど、うちの会社の寮のものと同じだった!今見てもボロイあのクーラー、2030年まで持つのか・・・・

では、今日はこの辺で。
また、手紙を書きます。
今度、一緒に映画を見に行こう。

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コウの鑑賞人blog : 『『サマータイムマシンブルース』 若さ×暑さ+タイムマシン=おバカ
http://opec.blog.ocn.ne.jp/blog/2005/08/post_2788.html

NaoLOG : サマー タイムマシン ブルース
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Swing des Spoutniks : 『サマータイムマシン・ブルース』~もどらない夏~
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