LM * The Letters about a MOVIE.

映画に関する君への手紙。

ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ Hedwig and the Angry Inch

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ [DVD] ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ オリジン・オブ・ラブ

■公式サイト

http://www.gaga.ne.jp/hedwig/

前略、元気ですか?

今日は、数ヶ月振りに、シゴトを定時であがりました。僕は、たまに早く帰って来ると、何をして良いか、迷ってしまう時があるんだ。それで、結局、夜までテレビを見続けてしまったり。

でも、今日は、なんだか音楽を聴きたい気分だったので、何を聴くか、CDやDVDをごそごそとひっくり返してみました。

それで、出てきたのが、コレだったんだ。『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』。

これは、元々は舞台だったのを映画化したもので、とても強烈な人物と設定で、さらに印象に残る曲が、たくさん出てきます。僕にとっては、絶賛、という映画では無いんだけど、なんて言うか、捨て置けないというか、どうも簡単に片付けられない気がする、そんな映画です。

 

 

この映画の主人公ヘドウィグ♂は、東ドイツの生まれ。米軍のラジオを放送で、ロックの洗礼を受けて育った。まだベルリンの壁があった時代。彼はアメリカの軍人と結婚して彼の妻としてアメリカに渡って来る。この軍人と結婚する時に性転換手術を受けるが、失敗。今でも彼の股間には、1インチの突起が残っている。

アメリカに渡っては来たが、すぐに捨てられ、ベビーシッターをして食いつなぐうちに、トミーという少年と知り合い、彼と組んで、音楽活動をする様になり、瞬く間にローカルスターになる。

ところが、トミーはヘドウィグを裏切り、ヘドウィグの曲を盗んでデビューし、それが受けて、ロックスターになってしまう。そして、今やヘドウィグは、トミーの全米ツアーに付いて回り、トミーのライブ会場の近くのライブハウスやレストランで、どぎついショーを繰り広げている。

と、まあ、こんなハナシです。

ライブのシーンの合間に、上に書いたようなストーリーが語られるという作りで、歌のシーンが、たくさんあります。この曲がなんだかとても良くて、印象に残るんだ。

中でも、印象に残っているのが、『Origin of Love』、愛の起源、という曲。

昔、人間は、2組の手足、2つの頭を持った生き物で、お互いに、話をすることも出来たけれど、愛を知らなかった。その人間達には、3つの性があり、1つは、男性同士が背中と背中がくっついている、『太陽の子』。2つ目は、女性同士が同じようにくっついている、『大地の子』。そしてもう1つが男性と女性がくっついた『月の子』。

ところが、神たちは人間が、力を付け過ぎた事を恐れ、稲妻で彼らを半分に切り裂いてしまう。

切り裂かれて、2本足の生き物になった、人間達は、お互いの姿を見て、痛みを感じる。その”痛み”が、愛の始まり。

と、そういう歌です。

他の歌も、どれも、同じくらい印象的で、ヘドウィグの物語と相まって、悲しくも、美しい。そしてパワフルなんだ。

なんだか、スゴイ映画だなぁ、と初めて見た時に、思いました。東西冷戦の終焉、同性愛、といった現代の世界が抱える問題を、これでもかと盛り込んで、ヘドウィグという魅力的な人物を作り出し、魅力的な曲、強烈なおフォーマンスをする。こりゃ、すげぇ、という感じだよ。

そして僕は、この映画を見て、結局は、”愛”なのか?と思いました。

僕達の社会は、人間関係によって作られていて、その中で起こってくる、人間の行動、行動への衝動の源には、愛があり、そして、僕達が、幸せになるにしろ、不幸になって地獄を見るにしろ、そこには、愛があるのかも知れないなあ、とそんなことを思いました。

なんだか、良くわからないかな?フフッ、自分でも良く分からないかも。でも、見たら、君にも分かるかも知れないよ。

もしかしたら、君がこの映画を見たら、ヘドウィグのドギツさに、嫌気がさしてしまうかも知れない。でも、ヘドウィグというのは、今の世界の、本当のこと、の一部を強烈に僕達に訴えてくる、そんな存在で、その訴えてくる事に耳を傾けたら、何かが見えてくるのかも知れないよ。

では、今日はこの辺で終わりにします。

また、手紙を書きます。

今度、一緒に映画を見に行こう。