リンダリンダリンダ - LM * The Letters about a MOVIE.

前略。久し振りです。
あっと言う間にお盆が過ぎてしまいました。
日本には素敵な四季がある、と良く言うけれど、今の僕は、いつの間にか四季が変わっているのに気付いて、時間の流れの速さに愕然としてしまうんだ。

年齢に比例して時間の流れは速くなっていく、なんて聞いたことがあるけれど、確かに最近は、なんか、気付いたら１０年くらい経っていたような気がしています。だから、昔はそうじゃなかったかなと、ついそんな気もしてきてしまし、いつまで経っても、自分がオトナになれていない様な気がしてきて、あせってしまったりもするんだけれど、でもそれは、気のせいなんだ、という気もします。

そもそも僕は、人に誇れるような、素晴らしい過去を持っているというわけでも、何というか、カッコ付きの『青春』なんて実感を持ったこともないし、それなのに、昔は良かったみたいな感傷を持ってしまう、というのは、ちょっと僭越な気がしてしまうんだよね。

そんな僕から見て、この『リンダリンダリンダ』は、とても絶妙な映画でした。

バンドをやっている女子高生達が主人公なんだけど、文化祭を前にメンバーの一人が怪我をして、文化祭に出られなくなってしまう。で、それがきっかけで、中心メンバー同士のけんかになり、結局、急遽、別のボーカルを見つけて、予定とは違う曲をやることに。しかも、ちょうど通りかかった、というだけの理由でボーカルをやることになるのが、韓国から来た留学生だった･･･。というストーリーの映画です。

僕達の日常は、いつでも、理想と現実、というものがつきまとっている、という気がします。

それは、この映画の主人公達だってそうだろう、と思うんだ。バンドの中のぶつかってしまった人間関係やら、元カレとかね。何かをやろうと思ったからって、それだけで世界が素晴らしいものに変わるわけでもないんだな。

たまに、自分の置かれた位置に感謝して･･･、なんて宗教家みたいんなコトを言う人もいるけれども、本当に自分の置かれている場所や状況に満足できることなんて、そんなに無いんじゃないかと思う。なぜかと言うと、僕達は、感情があり、何かを思ってしまうんだから。こうしよう！とか、こうしたい、ああしたい、とか、思うなって言う方が無理ってもんだ。そして、思った全てを、実現できるわけでは無いから、僕達は、常に、１００％OK、とは思えないまま、その今が、大切な思い出になる、なんて思いもせずに進んでいく。

でも、それが、気付いたら、大切な思い出になっているコトがある。

この映画を見て、『思い出』って、こんな風に作られるのかも知れないな、と、思いました。

* * *

なんだか、とても個人的な感想と書いてしまった、という気がしているけど、君はどう思うかな？

僕がこんな風に思ったのは、多分、この映画の、高校の文化祭、という何の変哲も無い舞台、そして、それを撮る距離感のなせる技なのかな、と思います。その辺が、絶妙だなあ、と思うんだ。

登場人物のキャラクターも、とても面白かったよ。けんかをしている２人、恵と凛子のアネゴな様子には、ちょっとしびれてしまいました。そして、いつもかわいらしく笑っている響子、渋いベーシスト望、それにとぼけた留学生のソン、とそれぞれの色があります。

次にここを通った人をボーカルにしよう、とか、武道館とか、『パンツ見えてるよ』とか、告白とか、おもしろいシーンもたくさんあるよ。

んで、これらが、絶妙な距離感で、描かれていくんだなあ。

それから、個人的に、おー！と思ったのは、体育館で、時間かせぎに歌われる歌が、『すばらしい日々』に、『風来坊』とは！こんなに３０男の壺にハマる選曲をして大丈夫なの？と思ってしまいました。

と、いうわけで、久し振りに映画を見に行ったら、絶妙に良い映画で、なんだか、今日は良い日だったなんて思っている僕です。

では、また手紙を書きます。
こんど一緒に映画を見に行こう。

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Swing des Spoutniks ：リンダリンダリンダ
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