LM * The Letters about a MOVIE.

映画に関する君への手紙。

丹下左膳 百万両の壺(続き)

丹下左膳餘話 百萬兩の壺前略、元気ですか?
ちょっと、久し振りの手紙になってしまいました。なんだかんだとやっているうちに、もう8月も半ば。油断していると時間の経つのは早いものだね。君は、どうしていますか?

今日は、『天下左膳 百万両の壺』の続きです。
→ http://miyadaic.hatenablog.com/entry/2005/07/25/123700

 

丹下左膳 百万両の壺 特別版 (初回限定生産2枚組) 僕にとっての夢の時代劇、『丹下左膳』の中で、名作と言われている『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』。これをいつか見たい、と思っていたんだけど、豊川悦司主演で最近リメイクされているのを見つけたので、さっそく見てみた、というのが、前回の話だったよね。

ところが、その後で、正に、オリジナルの『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』がDVD屋さんの店頭に売っていて、これも歓び勇んで買って来ました。

というわけで、今日は、この2本の作品を両方見ての感想です。

この2本の映画、一方は、1935年、一方は2004年の公開なんだ。この2本の間には、僕達が生きてきた時間の実に2倍以上の時が流れているというワケ。1935年の丹下左膳大河内傳次郎、2004年の方は、豊川悦司です。

この2本、新しい方の脚本は、古い方の脚本をベースになっているので、基本的には同じ話なんだ。

時は八代将軍、徳川吉宗の時代。主君の裏切りで右目と右腕を失った丹下左膳は、侍の身を捨て、矢場の用心棒に収まっている。財政難に苦しむ柳生藩主対馬守は、柳生家の家宝“こけ猿の壷”に莫大な隠し金の在り処が塗り込まれていることを知るが、壷は江戸の道場に婿養子に入った弟・源三郎への祝儀として譲り渡した後だった。そんな事情を知る由もない源三郎の妻・萩乃は、その壷を廃品回収屋に売ってしまう。紆余曲折の末、壷は長屋に暮らす少年の金魚鉢に収まっていた。かくして百万両の壷を巡り、様々な回収作戦が始まるが…。
■goo映画 : 『丹下左膳 百万両の壺』 あらすじ・解説の詳細
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD5174/story.html

で、同じ話だったら、同じような面白さなのか、っていうと、そうでも無い。僕は断然、1935年版の方が面白かったんだ。

2つを較べてみると、2004年版の方が、よりカッコ良さを意図している、という感じがしました。豊川悦司は長身で、スラっとしているし、チャンバラ、というか、殺陣のシーンが幾つか織り込まれているんだけど、1935年版の方は、チャンバラシーンは殆ど無い。しかも、あっても、まさに、チャンバラで、「殺陣」という感じではないんだ。

2004年版の方は、冒頭に、丹下左膳が、片腕隻眼になってしまったシーン、というのも配置されていて、今この映画を見る人達に、丹下左膳って、カッコ良くて魅力的なヒーローなんだよ!って言いたかったのかな、という気がします。

これに対して、1935年版の方は、その頃、丹下左膳というのは、もしかして、みんなが知るヒーローだったんだろうか、そういう余計なシーンは排除されていて、コメディーに徹している。

1935年版の方は、きっと、時代劇を撮ろう!ではなくて、コメディを撮ろう!と思って作られたんだと思うんだよね。それに対して、2004年版の方は、カッコ良い時代劇を撮ろう!と思って作られたのかな、という気がします。で、カッコ良さを持ち込もうとした分、それがあまりうまく行かず、今ひとつなのかなあ。

1935年の方の丹下左膳、彼とお藤の2人が、ちょび安という少年と暮らすことになり、強面の2人が、子供なんか嫌いだとかなんとか言いながら、どうにも、ちょび安がかわいくてたまらなくなってしまう、そこに、百万両の隠し場所が塗りこめられた壺が登場し、その壺を探す大人達の騒動もからんで・・・、というストーリーを、ちょっと落語の人情話のように、ちょっとハリウッドのコメディの様に、楽しく見せてくれています。

丹下左膳がお藤と言い争い、『俺は嫌だい!』と盛んに言っているのに、結局、やってしまう、とか、お藤が歌い出すと、左膳が、猫の置物を後ろに向ける、とか、同じことの繰り返しで笑わせる手法が、とてもわかり易く、楽しめます。

ちなみに、この猫の置物、2004年版の方にも意味ありげに出てくるんだけど、最初に2004年版を見た時には、僕には、何のことやら意味が分かりませんでした。1935年版の方を見て、やって、あ、そういう意味だったの...なんて。

それから、1935年版のだるまを使った場面転換がちょっと面白くて(まあ、見てみてよ)、なんだかそういう細かいところが良いなあ、と思いました。

2004年版の方は、豊川悦司が、大河内傳次郎の口調を真似ているのかな、と思わせるような演技をしているところも、あるんだけど、全体として、お藤役の和久井映見との掛け合いが、どうも上滑りしてるかなあ、という感じで、いまいち乗り切れませんでした。映画全体のテンポが悪いのかも。

それにしても、丹下左膳という異形のヒーローを、お藤のヒモにしてしまったり、ちょび安をいじめる、いじめっ子をひっぱたかせたり、そういう身近なところまで、引き下ろしてきて、人情いっぱいのコメディーにしてしまう、という発想が良いよなあ、と思います。そりゃあ、リメイクもしたくなるってもんだと思うよ。

丹下左膳 リメイク、と言えば、この百万両の壺、こちらはテレビだけど、中村獅童もやっています。中村獅童と言えば、豊川悦司には無い、茶目っ気があり、ちょっと生々しさもあり、結構似合いそうな気もするね。昔、『浪人街』という演劇を見たことがあるんだけど、この時の中村獅童は、なかなか良かったという記憶があります。

さて、こうして、大河内傳次郎豊川悦司中村獅童、と3人の俳優さんが出てきたけど、君は誰が一番好みなのかな、なんて思ったりしています。まあ、大河内傳次郎なんてあまり見たこと無いと思うケド。

この夏、君も、たまには時代劇なんかも、見てみたらどうだろう?

では、また手紙を書きます。
今度、一緒に映画を見に行こう。
では、また。

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2004年版の方を見た方と、両方見た方です。やっぱり、1935年版の方がお薦めかな。
やましたのおいらの雑記帳 : 対決!新旧「丹下左膳百万両の壷」
http://barcelonista.txt-nifty.com/text/2005/07/post_70f0.html
 
Pocket Warmer : 映画: 丹下左膳 百万両の壺
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