LM * The Letters about a MOVIE.

映画に関する君への手紙。

もっとしなやかに もっとしたたかに

もっとしなやかに もっとしたたかに [DVD]

前略、元気ですか?
この間、こちら大阪では、MBSというテレビ局で、深夜に、『もっとしなやかに もっとしたたかに』という映画を放送していました。前に、『ダイヤモンドは傷つかない』のことを書いた時にちょっと触れた映画です。

ダイヤモンドは傷つかない
→ http://miyadaic.hatenablog.com/entry/2005/05/27/124337

とりたてて、今、改めてもう一度見なきゃいけない、というものでは全然ないんだけど、結局、最後まで見てしまいました。だってさ、結構おもしろいんだもん。

これは1979年の映画で、『ダイヤモンドは傷つかない』と同じ、藤田敏八監督す。出演しているのは、奥田瑛二森下愛子風間杜夫といった俳優さん達。蟹江敬三も出ています。

そう言えば、この藤田敏八という監督は、僕は殆どリアルタイムに見ることが出来なくて、どんな人物なのか全然知らないんだけれど、おもしろい映画をたくさん撮っています。そして、写真を見ると、妙に渋くてカッコイイ人です。
http://mie-cinemafesta.net/MieDirector_FujitaProf.html

どう?

 
さて、この映画についていろいろ書かれているのを見ると、『ニューファミリー』という言葉がキーワードみたい。でも、もう、あまりなじみの無い言葉で良く分からないよね。

第二次大戦後生まれの若い夫婦と子供から成る家庭をいう語。従来の価値観から大きく変化した消費動向をもつとされる。
大辞林

まあ、これでもよくわからないけど。まあ、高度経済成長を経て、生まれてきた、新しい家族のカタチとかって言う奴かな。僕が思うに、日本である世代から以降、どんな家族を作るのか、どうやって家族を作るのか、迷うようになったというか、自信が持てなくなったのかなあ、と思う。

この映画の中でも、奥田瑛二演じる主人公は、家族を成り立たせる為に、カメラマンになるという夢もあきらめたのに、奥さんには逃げられちゃうし、四苦八苦してる。と言っても、若くて魅力的な女の子(森下愛子ね。とてもかわいいよ。)が現れれば、関係してしまうんだけど。

それで、逃げてる奥さんの方も、なんというか、自分の居場所に安心できないのかな、という気がします。つまり、二人とも自分達がつくる家族とかいうものに自信がないんだなあ、という感じ。

これに対して、そういったことから自由なのが、森下愛子です。売春するは、奥田瑛二のカメラは盗むは、でなかなか始末に終えないけれども、奥田瑛二の子供ともすぐ仲良くなってしまうし、しまいには、入院していた奥田瑛二の父親を頻繁に見舞うようになったり、この父親が亡くなった時には、一番その死を悲しんでいたのは彼女なのかも知れない。

というのは、結局、家族がどうとかこうとか、つべこべ考えない、一見自分勝手な人間が、一番、他人との関係を結ぶことが出来てしまっていて、うだうだやっている人間はなかなか自分が望む家族の愛とかそういったものにありつけない。そんなところを皮肉に撮ったのがこの映画かなあ、と思います。


ところで、じゃあ、今の時代はどうなんだろう、と考えてみると、以外と今、20代とかの人達の方が自由だし、よけいな事考えなさそうだからうまく行くのかな、なんて思います。一見、日本という国が、何かを達成したかの様に見えた、バブルの時代の、IターンだとかUターンだとかって言葉がもてはやされた頃を経て、家族のあり方というのも、いろいろな価値観が生まれてきているよね。それだけ、選択肢は拡がっているし、考える材料もあるってことなんだよな、と思います。だから、今を生きている僕達は、僕達なりの、良いと思うものを選び取って行けば良いと思うし、それしかないよなあ、なんて思います。


あれ?こんな難しい映画じゃなかったような気がしてきました。森下愛子がすごくかわいい。風間杜夫がおもろい(ひとりだけ、異常にハイテンションなんです)。奥田瑛二は情けない役が昔からよく似合うんだなあ、そんな映画です。

というわけで、今日はこれで終わりです。なんだか今日の僕って、社会評論家(そんな言葉あったっけ?)みたいじゃなかった?

どうでも良いけど、あなたは、どんな家族を望むの?

え?それは、また、2人だけで会ったとき、君に聞く気があれば、じっくり話そうよ。

じゃあ、また手紙を書きます。
今度一緒に映画を見に行こう。

では、おやすみ。