がんばっていきまっしょい
前略、元気ですか?
大阪にも、やっと梅雨がやって来たようで、
ここのところ、雨の降る日が続いています。
そちらはどうですか?
今日、職場で、韓国人の同僚が、
休憩時間にイヤホンをして、
何やら聞いているので、
何聞いてんの?と僕も聴かせてもらいました。
それは、英語の歌詞で、
でも、ちょっと不思議な雰囲気。
そして、どうも聞き覚えがある歌でした。
歌っているのは、韓国人の歌手だけれど、
日本の映画の主題歌になったので、
聴いたことがあるんじゃないか、とのこと。
でも、その彼は主題歌になった、
ということは知っていても、その映画のことまでは、
知らないということで、話はそれで終わったんだけれど、
さっき調べてみたら、分かりました。
その映画は、『がんばっていきまっしょい』でした。
僕の記憶では、この映画、
冒頭のシーンが、いかにも」なんだけど、
それがとても良くて、これはイイゾ!と思わせられました。
そして、その最初の感触の通りの素敵な映画でした。
雨に煙る海岸に建つ廃屋で話をしている3人の男達。
その廃屋は、かつて高校でボート部の建物だったらしいが、
彼らは、その建物を取り壊す相談をしているらしい。
バックに流れる音楽。
英語の歌詞だが、静かで、美しく、郷愁を誘う。
壁には、色あせた新聞記事や、ポスター、写真などが貼ってあり、
かつてそこを使っていた高校生達の様子を想像させる。
その中の1枚の色あせた写真。
5人の体操着を来た女の子が写っている─
そして、1976年、春。
海辺に座っている女の子。
海を行くボートから聞こえてくる掛け声。
バックに流れる不思議な歌詞・・・・・
この「不思議な歌詞」の部分が、
「オギヨディオラ」と言っていて、
韓国の船を漕ぐ時のかけ声なんだそうです。
僕はこの映画を見た時は、
この、「オギヨディオラ」の部分が、
何語か分からず、北欧の歌かなあ?
な~んて思ってたんだ。
全然違ったわけだけどさ...
いや、別に北欧に根拠があったわけでもなく、
あっちの方って、何か不思議な響きの言葉を、
使ってそうじゃない?と思っただけです...
実は歌っているのは、リーチェという人で、
もともとは別の名前で、韓国で歌手をしていて、
とても人気があった人なんだって。
この歌、とても素敵です。
映画の最後にはもう一つ別の曲が流れるけど、
両方ともなかなか良いよ。
この映画では、僕は、なんというか、
不思議なミスマッチ感、みたいなことを感じました。
まず、さっきから書いている、
英語で歌われている主題歌が、
「がんばっていきまっしょい」というタイトルなのに、
熱血っぽい曲じゃない、というところ。
むしろ、反対じゃない?という感じ。
そして、登場してくる高校生達も、
なんというか、スポーツものとは思えない、力の抜け方です。
また、あの方言ののんびりした感じが、これまた力が抜ける。
そして、彼女達の前に現れるコーチ。
これまた、なんか、どべー、としてて全然やる気ないし・・・
タイトルと、
女子部がなかったので、
新しく作って、試合に出て・・・
という設定から僕が想像してしまう、
ストーリー展開や雰囲気を、
ことごとく裏切ってくれています。
それでいて、彼女達は、
「新人戦まで」という約束だったボートを、
続けることにするし、試合では勝ちたいと思うし、
コーチだって、彼女達を応援している。
それがよく伝わってくるし、
レースのシーンでは、
やっぱり手に汗握ってしまうんだ。
要するに、このミスマッチ感というのは、
スポーツ根性ものではない!ということなのかな。
単なるスポーツ根性ものとは違うという、
そのことによって、誰もが持っている「あの頃」の、
将来に対する不安だとか、大人達に対する気持ちだとか、
仲間との一体感だとか、異性に対するドキドキする気持ちだとか、
そういったものを思い出させてくれる。
だから、僕達はこの映画を見ながら、
自分の「あの頃」に重ね合わせつつ、
彼女達に魅せられてしまう、そんな気がします。
ところで、
この『がんばっていきまっしょい』は、
この7月から、TVドラマになるらしい。
一度映画化されたものをドラマにしたり、
その逆とかについては、どちらかと言えば、
否定的に思ってしまうけれども、
まあ、出来がよければ、それで良いのかな。
TVドラマでは、映画の良さとは、
別のところを目指すことになると思うんだけれど、
なかなか難しそうだよね。
では、また手紙を書きます。
今度、一緒に映画を見に行こう。
■トラックバックしました あいりのCinema cafe:がんばっていきまっしょい(ビデオ)
→ http://aili.blogzine.jp/cinema/2005/05/post_f3d9.html
マーク・ダーシーの日記:マイベストムービー第7回「がんばっていきまっしょい」
→ http://markdarcy.exblog.jp/1060669
CUITEブログ:がんばっていきまっしょい 田中麗奈
→ http://audrey.jugem.jp/?eid=3774