ひみつの花園 vol.001
前略、元気ですか?
少し久しぶりの手紙になってしまいました。
仕事のし過ぎだね。
今、大阪から東京へ向かう新幹線の中で、これを書いています。
本当は昨日のうちに東京へ移動する予定でしたが、なかなか抜けられず、
結局、今日、移動しているというわけ。
ちなみに今乗っているこの新幹線のぞみ100号、
6:00新大阪発、8:22分品川着で、9:00には会社に着いてしまう。
ということは、今日もまる一日仕事をするということで、
ちょっとはサボらせて欲しいもんだよね。
こんな電車なければ、大手を振って、不可抗力だってサボってやるんだが。
昨日も夜11時くらいまで仕事してたので、
あんまり寝てなくて、せっかくの2時間半、睡眠を取るべきって、
説もありますが、今日は、手紙を書く時間に当てることにしました。
ということで、新幹線の中です。
普通の席でパソコンをひろげるのは、
ちょっと狭くて気がひけるので、なんとグリーン車を取りました。
自腹だけど。
グリーン車って、なんかフライト・アテンダントみたいな、
お姉さんが頻繁にやって来て、ゴミとか片付けたりしてくれます。
知ってた?
そんな僕ですが、君はどうしていますか?
… 寝てるだろうね。
きっと。
「ひみつの花園」という映画があります。 僕のとても好きな映画。監督は矢口史靖という人。 ウォーター・ボーイズ、スイング・ガールズ を監督した人です。
この間の、といってももう結構前だけど、 スイング・ガールズは、君も面白かったと言っていたよね。 でも、この映画は、もっと面白いと僕は思います。
銀行員の咲子は、小さな頃からお金が大好き。 お金を数える時だけ顔がほころぶような人間です。
趣味はお金を数えることです。
という台詞で、銀行の入社試験をパスし、決め台詞は、
おごってくれるんなら、そのぶん、お金ちょーだい?
でも決して積極的に金もうけや財テクに走るような、 そんな人間ではない。なんとなく貯まっていく貯金額を数えて、 ひとりほくそ笑んでいる、どちらかと言えば、無気力な人間。
無気力だけど、 「おごってくれるんなら、そのぶん、お金ちょうだい?」なんです。 お金が好きなんです。 この台詞のせいで、男の子にもフラれてしまい、本人が言うには、
いつも誰かの後ろにいる、目立たない女になった
そうです。
天職かと思った銀行員の仕事も考えてみれば、いくら数えてみても、他人のお金、そう考えると、この仕事もむなしいばかり。と分かり、いっそのコト、銀行強盗でも起こってくれらないかしら・・・、
そして、本当に銀行強盗が起こります!咲子は人質に。
結局、銀行強盗は逃走の途中、 青木が原で運転を誤り、崖の下に車ごとまっ逆さま。 崖に落ちた車は爆発炎上。
咲子は、強盗が奪った5億円の入ったトランクと共に、
爆発で吹っ飛び・・・
川を流され・・・
滝を下り・・・
地下水脈を流され・・・
ついに、深い穴の底の地下水の溜まっているところに来ます。 見上げると、遥か上の方に空が見えます。
そこで、これまで浮き輪代わりに咲子を支えてくれていた、 5億円入りのトランクが沈んでしまい、これで一巻の終わり。
と思ったら、そこからまた流されたらしく、 山中の河原で発見されて、助かります。
助かった咲子は、一躍、時の人に。
テレビや雑誌の取材を受けたり、
銀行の支店長が花束持って見舞いに来たり。
でも、
ちやほやされたのは、最初の一ヶ月だけ
まあ、そんなもんだ。
その後は、数ヶ月のリハビリを経て、
銀行に復帰。
でも、リハビリ生活のせいか、
サボり癖がついてしまい、仕事にも身が入らない。
そんなダラダラした生活の中、 ある日、テレビのニュースで、あの銀行強盗事件のことが放送されます。
それを見ると、
車が爆発炎上、5億円も粉々になったと思われ、一円もみつかりませんでした。
と言っている。
でも、咲子は知っています。
小さな頃からお金を数えている時だけ、生き生きしていた咲子。
「いつも誰かの後ろにいる、目立たない女」だった咲子。
お金を数える以外に好きなこともなくて、銀行員になるしかなかった咲子。
その銀行でも、むなしい思いしか抱けなかった咲子。
リハビリ明けで、すっかり気力を失った咲子。
ちょっと他人とずれた、
無気力で、お金を数えることだけが楽しい、
そんな咲子にこの時、天啓が走ります。
咲子は知っています。
5億円は、車と一緒に燃えちゃったんじゃないんです。
5億円ってあそこに沈んでる。
私は生きる目的を見つけた!
長々と書いたけど、安心してください。
ここまでで、やっとこの映画、タイトルが出るところです。
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今、掛川駅を通過。
ごめん、眠くなってきてしまいました。
続きはまた、後で書きます。
ちなみに、大阪に戻るのは、明日の夕方の予定です。
では、中途半端だけど、
また、手紙を書きます。
今度、一緒に映画に行こう。