LM * The Letters about a MOVIE.

映画に関する君への手紙。

最初の手紙

前略、元気ですか?

ずいぶん久しぶりの手紙になってしまいました。

今ごろ、君はどうしているだろうか?

離れて暮らしてみて、こうして君のことを想うのが、

習慣になっています。

僕の方はあいかわらずの忙しい日々を送っています。

君への便りもままならず、申し訳ない。

あまりの忙しさで、自分の時間をとることができず、まるで、

自分が自分でないような気分になってきます。

忙しさに追われることで、何かを失っているのかも知れない。

今の暮らしの中で僕は何かを得ることができるのだろうか?

と不安になります。

ところで最近、映画は見ていますか?

いろいろやりくりして2時間の空きを作り出し、

映画を見に行くことが、今の唯一の楽しみです。

映画を見て、つきまとう不安感をまぎらせたり、

逆に、前向きな気持ちを思い出したりしています。

そういえば、僕がいつから映画を好きになったか、

君に話したことがあったろうか。多分なかったと思う。

今日はその話をします。

あの頃、僕は14才か15才だったと思う。

ある日、何の気なしに新聞のテレビ欄を見て、

深夜に放送される映画の録画予約を仕掛けた。

タイトルは『カイロの紫の薔薇』

初めて聞いたタイトル、初めて見る監督。

どんな映画だろうか?

と思いながら、その日は寝た。

ところが、、、

その日、そのテレビ局では、ナイターの野球中継が

放送されていて、その試合が延長になったせいで、

それ以降の放送時間が後ろにずれこんでしまっていた!

結果として、予約した映画の放送時間もずれ込んでいた。

今のビデオは賢くなってそれぐらいものともしないが、

当時はそんな機能は無い。

でも途中までしか録れてないんだろうな、と思いながらも、

翌日その映画を見る。これが、あまりに面白い。

ちょっと面白い発想。ワクワクする様な展開。

間違いなく今までに見た映画の中でベスト1だ…

……

やっぱり最後の30分が録れてなかった。

僕は涙にくれたね。

続きを見たくて見たくて仕方がなかったけど、

結局その後、3年くらいは見ることができませんでした。

でも、その時にあまりに「見たい!」と思ったせいか、

それ以後、映画を見るという行動が、

僕の中のどこかに、刻み込まれてしまったような気がします。

というわけで、僕は今もちょっと時間があると、

映画を見ずにはいられない。

また、君に手紙を書きます。

今度、一緒に映画を見よう。

今日はこの辺で。